プロ棋士。

昔はよく見ていた「NHK杯テレビ将棋トーナメント」を視聴した。藤井聡太四段が登場するのである。相手森内俊之九段。いつもは録画放送のこの番組も、異例の生放送となった。

永世名人資格を持つ相手に対して、藤井四段は盤石の指し回しを見せた。危なげないところのない快勝。

生放送ということもあり、余裕のある番組構成となっていた。30分以上感想戦の時間が残った。ここでの、森内九段の姿勢が素晴らしかった。

対局前のインタビューで、「長いプロ棋士生活の経験を生かして頑張りたい」と述べていた森内九段。いくら話題の棋士とはいえ、15歳の新四段に負けてなるものかという気持ちは強かっただろう。しかしそれでも、感想戦では将棋を教わるような姿勢で藤井四段に話しかけていた。卑屈さもなく、ごく自然に目の前の将棋を検討していた。

森内九段と言えば、この春に長年在籍したトップリーグのA級から陥落し、下のリーグで戦い続けることなく、フリークラスへの転出を決めた。言わば半分は一線を退いた棋士でもある。そのような立場でありながらも、将棋の勉強に対して真摯な態度を失わない姿にプロとしての矜持を見た。