仮眠室。

勤め先の会社がオフィスを移転したのはもう3年近く前になる。前のオフィスで働いたのは都合5年強、思い返してみればかなり長い時間を過ごしたように思うが、その大半は記憶のかなたにて思い出に変わりつつある。

前のオフィスには仮眠室が設けられていた。ポットやテーブルがある休憩室の隣にある6畳ほどの部屋。革張りのソファーが置かれ、ソファーの上には毛布が丁寧に折りたたまれている。もう時効だから話すが、僕の仮眠室利用回数はかなり高かったのではないだろうか。

頭がぼんやりと重くなってくると、仮眠室に向かう。部屋は電気が落とされているが、隣の休憩室との間、天井近くはすりガラスになっており、そこから光が漏れてくる。部屋の壁は青く、漏れた光に包まれてまるで海の底にいるような不思議な感覚になり、疲れはよくとれた。たいてい20分ほどソファーに横になっていると、スッキリとしてまた仕事に集中できるのだ。そして廊下に人がいないことを確認してそっと部屋を出る。

あの不思議な雰囲気の仮眠室も、もはや若い頃の思い出の1ページになりつつある。あの頃はあの頃で、よく働いていたな、と思う。