乗鞍。

1年に1度のマラソンを今年も走ってきた。

当日の朝起きると、冷たい雨がしとしとと降っていた。本降りではないが、傘なしで外にいることはできないくらいには降っている。降雨レーダーの予測図を見ながら、温泉に向かう。湯に浸かりながらみずみずしく濡れた緑を眺めるのは悪くないのだが、どうにも気分は浮かない。

スタート時刻が近づいても雨は弱まらない。こんな時に限って、コンタクトを忘れてきたのだ。歩いて制限時間ぎりぎりにゴールすればいいや、と開き直る。レインコートを着てスタートする。

メガネに水滴がついて視界が歪むので、思い切ってメガネを外してポケットに入れて走る。0.1未満の視力でも走れないことはないし、むしろ眼の負担感がなくなって走りやすい。いくぶん気分もよくなって、快調に走る。もちろん走ってばかりでは先が思いやられるので、疲れを感じたらすぐに無理せず歩く。歩いたり走ったりの繰り返しで、あまりタイムも良くないだろうと思いほとんど時計も見ていなかったが、それがかえってよかったのか、それなりに良いペースで進んでいることに途中で気づく。気持ちは軽くなるが、雨はいっこうにやむ気配がない。(明日に続く)