ホリデイその4

クアラルンプールに来たのは10年ぶり。前回は、深夜特急に影響されてシンガポールからバンコクへと北上するなかで立ち寄った。リトルインディアの汚いゲストハウスに3泊しただけで記憶もおぼろげである。

街並みは落ち着いているし、バンコクのような猥雑さもない。近代的な街になってからもう相当年月が経つ。チャイナタウンやリトルインディアの雰囲気は相変わらずだが、全体的にはこじんまりとまとまっている。

しかしながら、空港でも街中でも、人に声をかけられるということがなくなった。繁華街の客引きも見ない。詐欺師のようなおっさんなど全く見かけない。このあたりは顕著な変化である。iPhoneを片手に持つ人も増えた。タクシーについては、雨が降ったり深夜になればメーターを倒そうとしないドライバーも出てくるが、おおむね対応は良く、なおかつ安い。

日本企業の進出も改めて増えている。特に小売りの分野が元気だ。日本人向けに出店する、というフェーズから、完全に現地の人へとターゲットが移ってきている。価格帯は日本で販売されているそれとほとんど変わらないか、むしろ少し高いくらいで、現地の物価からすればまだ少し高いようにも見えるが、なかなか盛況である。ショッピングモールには、日本の店がまとまっているスクエアもあり、日本人でもなかなかなじみのないような地方のご当地グルメを扱っていたりもするし、盆栽や雑貨の店もある。逆に、韓国や中国資本の小売り店舗はほとんど見かけない。

ナイトマーケットの元気さは相変わらずだが、品ぞろえは大きく変わった。よくある海賊版CDやDVDは見なくなり、たまに歩いている男から声を掛けられるくらいだ。取り締まりが厳しくなったのだろうか。しかしながら偽ブランド品は多くなった。買う人がどれだけいるのかは疑問ではあるが。あとは時節柄iPhone関連商品が多い。Tシャツも多い。Tシャツと言えば、これまで各地で必ず買ってきたタンタンの冒険風景がプリントされたTシャツを探していたが、ついに今回は見つけることができなかった。聞くと、2年前に生産中止したとのこと。タンタンの漫画自体、ヨーロッパでもあまり読まれないようになったのだろうし、最近のTシャツではワンピースやPSY(カンナムスタイル)などのキャラが増えてきており、止む無しといったところか。どこかの街で売れ残ってはいないだろうか。こんなところでも時代の移り代わりを感じる。クアラルンプールのナイトマーケットは多くが中華系の人たちが店を出しているが、これも今後どうなっていくだろう。