ドリアン。

ドリアンを食べる。東南アジアで食べて以来なので、もう10年以上ぶりになるはずだ。臭い臭いと言われるが、僕は好きな食べものである。確かに匂いが口の中にもうもうと立ち込める感じにはなるが、それと同じくらいトロンとした果肉の舌触りがたまらない。

 

コロナ禍を経た六本木はなんだか歪な街である。テナントがスカスカの古いビルが多い。建て直しはしないのだろうか、できない事情もあるのだろうか。昔から変わらず営業をしている飲食店がかろうじて、ここが六本木であることを示している。ちょっとうらぶれた張り紙やらが貼られ、なかにはピカピカのクリニックやブランドショップが立ち並ぶアンバランスさは、なんだかバンコクカオサン通りやタニヤ、パッポンにも似てきたように感じる。

 

交差点に建つビルの7階へ。交差点の周りのどでかい広告看板を見下ろす。狭い空間にコンパクトに椅子とテーブルが並び、まるで空に浮かぶカプセルのような空間である。ドリアンのお口直しに、カレーを口に運び、アイスコーヒーを飲みながら、これまたアジアのようなスコールが窓にたたきつけられるのを眺める。