だいぶ前のことになってしまったのだが、大崎善生先生が亡くなられた。「聖の青春」「将棋の子」を皮切りに、先生の作品は半分以上は読んだはずで、不肖わたくしの少ない読書歴のなかではかなりの割合の高さを誇る。将棋に限らない幅広いジャンルで文才を発揮できる人だったと思う。
大崎先生の文章はとにかく優しい。必死にもがく人たちの人生模様に優しく、柔らかく光を当てる。読んでいて、自分ももっとがんばろう、前を向いて生きようという気持ちにさせられるのである。
札幌生まれで、お医者さん家系の人でもある。アカデミックな香りがするとともに、北海道のおおらかさ、空の広さを人間という器に詰め込んだような感覚もある。北海道の感覚はなかなか好きなのだが、大崎先生の影響もあるのかもしれない。
最後まで好きなように生きて、存分にその個性を発揮した人だと思う。自分もまた、そんな軽やかさをまとって生きていきたい。人生は長いように見えて短い。