小さな会社のものがたり①。

小さい会社には、大企業にはない物語がそれはそれであるわけで。

とある会社の周年パーティーにおじゃまする。けして世間から褒められる仕事ではないが、確かに消費者に利益をもたらしてきた業態である。主力の業態に陰りが見えると思えば、矢継ぎ早に新規事業を買収して、もちろん失敗したものもあるのだろうが、大当たりしたものもある。いまはメガバンクが頭を下げていくらでも貸しますよと言ってくれる会社である。

小さい会社といったがそれは失礼にあたるかもしれない。ただ、30年前はまぎれもなく小さい会社であったのだろう。15歳でこの会社に入ってたたき上げで30年、中卒から本部長にのしあがった人がいる。自分とはいくつも歳は離れていない。

自分もそれなりに修羅場はくぐってきたつもりなのだが、彼はまとっているオーラが違う。そして、創業者である代表の考えていることが手に取るようにわかるのだという。代表は代表で、その彼が少し考えて変化球の対案を出してくると、全てお見通しで、ちょっとひねったでしょ、と返すそうだ。そこには、異動もひんぱんにあるようなそれなりの規模の企業では測れないような関係がある。職人の師弟関係にも似たようなものだが、それよりももっと長く、総量で言えば濃密な関係なのだろう。(明日に続く)