少しお付き合いのあった、銀行家の方の訃報に接した。親子ほども歳が離れているその人は、破天荒な生き方をしていた。
コロナ渦に突入したころからは、ほとんど自力で日常生活ができないようになっていたという。まるで赤ちゃんのように、言葉にならない声を発しながら、流動食を口に運んでいた。
現役の頃は海千山千の猛者と切った張ったの勝負をしていたことが信じられないくらいだ。
人間はいつか老いる。そうして、誰しもが産まれた時のようなふるまいに戻っていく。人間の一生とは、そういうものなのだと思う。
男一匹の人生、なにが本当にそのなかで価値があることなのか、ということを思い起こさせる。カネは単なる記号である。
人生を振り返ってみれば、なんとつまらないことに心を奪われ、奔走させられていたのだろうという気持ちになることもあるだろう。
良いことばかりではない、風呂敷を拡げれば拡げるほど、人生の畳み方は辛くなることもある。最後はぐしゃぐしゃになってしまって、収拾がつかなくなることもある。
それでも人生は続いていくのだ。そして心臓の鼓動が止まるその時まで、よくぞ完走されました、お疲れさまでした。これからはゆっくりとお休みください。