話し手。

夜のシティホテルのロビーで、窓の外の大通りを見ながら話す。もう時計はてっぺんに近づいていて、通りを走る車の量もまばらである。

いい加減に眠い。先週から休みという休みがなく動き続けている。動くこと自体は楽しいことなのだが、床が変わると眠れない性質なのである。それでも日中の疲れからベッドに入ると6時間くらいはスッと睡眠がとれるのだが、自宅のベッドと比べると疲れの取れ具合は大きく違う。そんなわけで常に眠気を抱えている。

それでも、眠気を押してでも話をしたいことがたくさんあって、次から次へと言葉を紡ぎ続けた。かつての自分はここまでしゃべる人間ではなかった、と思い返す。

高校生の頃からだろうか、人前でしゃべる経験が増えて、自然と話す行為に抵抗感がなくなってきた。大学生の頃も、社会人になってからも、基本的にはしゃべってナンボの仕事である。そのうちに、タイトロープの乗りこなし方や、危険を察知して回避する方法、相手を見極めてギリギリまで条件を攻めた交渉など、場数を踏むごとに少しずつ話し方も習熟してきたと思う。

話し手として、円熟味を増し、一番脂が乗るのは50代後半くらいかな、と個人的には思っている。資格よりもなによりも、この口一本で(口先とまでは言わないが)生きてきたし、これからも生きていくことになる。