津軽。

ふと、青森に行った時のことを思い出して、無性に読みたくなった「津軽」を手に取る。たびたび心を病んでいた太宰治が、太平洋戦争の戦況も悪化した頃に、故郷の津軽を訪れたときの記録である。

 

例によって暗い文体なのだが、太宰が懐かしい土地との再開、懐かしい人との再会に触れて温かさを取り戻していく物語でもある。上京していろいろと好き勝手やっている間にも、津軽の地では変わらない営みを続けている人がいて、昔と同様に自分のことを扱ってくれる。そのことによって自分を見つめ直し、再発見する話である。

 

戦争も末期なのだが、津軽は驚くほど豊かで長閑でもある。太宰は桃源郷と記しているが、その頃の東京と比べれば異世界であるのは間違いないだろう。読んでみると津軽に足を運んでみたくなるほどに魅力的にも書かれている。

 

そして、当時太宰は34歳ではあるが、非常に老成しているようにも感じる。ある意味では好き勝手自由気ままに生きてきた身ではあるが、彼には彼なりの苦悩があったのだ。それは他の著作でも存分に描かれている。どんな身分に生まれようが、人生は辛く苦しいものだということがよく伝わってくる。