横須賀。

横須賀に降り立つのは何年ぶりだろうか。潮の匂いがする。JR横須賀駅は昭和の時代から時が止まったようだ。


時間が少し空いたので、ショッピングモールから海を眺めて深呼吸する。風が吹いて心地よいのだが、風に乗ってなぜか腐った臭いも流れてくる。建物にガタがきているのかもしれない。


ネイビーの基地はひっそりと鎮まりかえっている。おかげで横須賀の繁華街も以前にもまして元気がない。アーケードもシャッターが下されている店が多く、空洞化が激しい。おそらくは権利関係も複雑だろうし、再開発しようにもどうにもまとまらないのだろう。


2008年の頃によく訪れた街も、ずいぶんと変わってしまった。待ち合わせた中央駅の東口広場もガランとしている。思い出は思い出のままで、頭の中にパック詰めされている。


何者かになりたいと願っていた時代は過ぎて、いまは何者かになってしまった。これが願っていた姿なのかと逡巡しながらも、このままなんとなく年月をやり過ごしていくのかもなあ、という諦念もある。生き残ったことを喜ぶべきか、緩慢に生きていることを呪うべきか。