バナナ。

昔から家にはバナナを常備している。特に朝、きちんとごはんを食べる気がしないな、という時にも、バナナと牛乳くらいならするすると食べられてしまう。


バナナは不思議な食べものだ。買ってから数日もすると、皮には黒い斑点がびっしりと浮き出てくる。そのままさらに放置していると、皮全体が黒くなり実がふにゃふにゃしてくる。そこまで置いてしまうと食べても美味しくない。ちょうどいい塩梅になるまで追熟させるのが難しい。いいタイミングで一気に何本も食べられるわけではないし。


バナナは黒くなりはじめるとすぐに見切り品として売られはじめる。旬がとても短い。まれに、普通の価格で売られているのと同じくらいの量が見切り品としても売られていて、いったいいくらが原価なんだろうと思うこともある。


かなり昔だが、小さい虫が実のなかに入っていたこともある。どうやって潜り込み、そして身動きがとれない形で埋もれたのだろう。なんとも儚い。


バナナには人生の機敏がたくさん詰まっている。そうして今朝もまた僕は洗濯や洗いものをしつつバナナをつまんで朝ごはんにするのである。