週末の夕方、歯医者で治療を受けていた。昼間外で遊んでいたこともあって、まどろみのなかで横たわっていたのだが、ふとした瞬間に知覚のスイッチが入って、気持ちが悪くなった。
気持ちが悪いといっても、吐き気がするわけではない。息が苦しくなり、身体をよじらせたくなるような衝動に駆られるのだ。かといっていまは歯の治療中、むやみに動き回るわけにもいかない。
左手を挙げて治療を止めてもらおうとも思ったのだが、15秒くらいするとやや冷静になって、ひとまず身体の位置を少しずらしてみようと試みる。これくらいであれば治療に影響が出ることもない。そして深呼吸してみる。歯の治療を受けながら深呼吸をするというのもおかしな状況だなと心のなかで笑いながら、落ち着こうと心がける。
ひとまずの落ち着きを得ると、原因はなんだろうかと考える。薬品の匂いがするからだろうか、それとも口に異物を突っ込まれているからだろうか。散髪のときにエプロンを首で留められたとき、飛行機に乗っているときに我に返って恐怖がこみあげてきたときに似ているような気もする。この第六感はなんだろうか。