歳末の夜、ちょっと乗車時間が長めの通勤電車に揺られて帰る。時間は23時。酔客が多いからか、車内はたとえるならば柿ピーのような独特の匂いに包まれる。学生時代に誰かの家で部屋飲みをした時に漂う匂いと同じだ。
僕も多少お酒を飲んではいるのだが、ほろ酔いくらいで済んでいるのと、冷えた空気のせいか酒も早く抜けていくので、比較的冷静な状態でつり革に掴まっている。ひとつ向こうのドアには足元がおぼつかない酔っ払いもいる。
そのうちに目の前の席が空いたので座る。駅につくためにドアから忍び込んでくる冷気にさらされないように、ぐっと丸まってカバンを抱えていると、知らず知らずのうちに眠ってしまったようだ。目を覚ますと車内はガランとしていて、すぐに違和感を覚える。寝過ごした。
肝を冷やしたが、折り返しの電車はまだある。いよいよ寒くなってきた風を受けて、すっかり酔いの醒めた頭で、逆方向のホームに立つ。駅前のスーパーに寄ってなにか買って帰りたい夜だ。