栃木。

11月も下旬に入ると、夕暮れが本当に早い。はるか向こうに見える渡良瀬遊水地が弱々しい夕焼けに染まる。森高千里の「渡良瀬橋」の歌詞のとおり、胸がきゅっと締め付けられるような光景である。


そんな貴重な瞬間は一瞬で、だだっ広い関東平野はあっという間に暗くなる。人家も少ないところにいると、まるで全てが闇に包み込まれていくようである。人間とは違う次元の生きもの(そもそも生きものではないかもしれない?)が代わりにうようよしはじめるような、そんな闇の世界である。


ふと、このあたりが「秒速五センチメートル」の舞台であったことを思い出す。あれも不思議な作品だった。関東平野のはしっこにありながら、人気の少ない場所だ。作品のなかでは大雪が降った日ということもあり、いっそう人いきれのない、まるで異世界に迷い込んだような描写になっている。日が没して急に冷え込んできたきょうも、作品と同じような雰囲気に包まれている。こんな日は、感覚が鋭敏になる。