街から町へ。

若い頃を過ごした街、その隣町で泊まる機会があった。人口3万人くらいの小さな町である。

県道を西に向かう。何度か泊まりで遊んだことのある公園、車がガス欠になり知人に迎えにきてもらったガソリンスタンド、あてもなく入ったことのあるカフェ、忘れていた思い出をひとつひとつ拾っていきながら車は走る。そういえば、西に向かうこの道は夕暮れが綺麗だったことを思い出す。

お城のようなファミリーレストランを横目に見て、先日聞いた話を思い出す。最近親しくしていた人がこの街に引っ越してきた理由は、亡くなった息子さんが過ごした街だったからだ、という話だ。そのことを知らないほうがよかったのか、知っておいてよかったのかはわからない。

そうしていると、夜空にライトアップされたホンモノのお城が見えてくる。ホンモノといってもこの城は平成に建てられたものだが。

ひっそりとした町の旅館に収まって、誰もいない湯船に浸かって、大きく息を吐く。