満月。

日に日に暖かくなってきて、いい気分で家の近くを歩いていた夜のこと、ふと空を見上げると、雲の切れ間から、満月にほど近いお月さまが顔を出していた。夜にゆっくりと空を見上げたことなんて、どれほどぶりだろうか、と考えた。

空に浮かぶお月さまを最初に意識したのは、大学に入学してすぐのことだった。寮への入居が終わり、新歓イベントに参加した帰り道だったか、ふと空を見上げると満月だった。次の満月になるまでとりあえず頑張ってみよう、とお月さまを見ながら誓ったことを今でも覚えている。

それから、ことあるごとに空を見上げ、満月を探しては時間の経過に思いを馳せた。特に、新しい環境でスタートを切ったタイミング、新卒就職の時や、転職の時には、必ず節目に空を見上げて満月を見つけては、次の満月まではまず頑張ってみよう、ということを思った。

そのうちに、仕事にも慣れきってしまい、お月さまを眺めて決意を新たにすることからも遠ざかってしまっていた。ずいぶんと久しぶりに、お月さまの存在を意識した。

明確な区切りではないけれども、ここがひとつの転機なのだろうと思う。