京都の、普段はあまり足を運ばないエリアを歩く。道の幅も空も広い。インバウンド向けに急ごしらえしたような簡素な旅館に、ブルカを巻いた人たちが吸い込まれていったり、廃校になった小学校が研究施設に転用されていたりなんだかカオスな雰囲気だ。
夕方遅い時間なのだが、日没にはまだ間がある。昼間はかなり蒸し暑かったのだが、この時間になると涼しい風が吹いてきてどこまでも歩けそうだ。ジャケットを手に抱えてずんずんと進んでいく。
鴨川を陸橋で越える。このあたりになると工場なども建ち並んで鴨川といっても風情がない。代わりに稲荷山が目の前に迫ってきて、青々とした緑が目に優しく映る。
たこ焼き屋についつられて入ってしまい、道草を食う。懐かしい人に立て続けに電話をしていると、細い路地の向こうに東福寺駅が姿を現す。帰宅ラッシュで混雑している特急は避けて、きょうくらいは準急でのんびり揺られて大阪に向かってみようか。ようやく暗くなり始めた東の空に満月が昇ってきた。