春の夜。
ずいぶん暖かくなってきた夜空の下で煙草をふかした。お酒を飲んだときに、1ヶ月に一度くらいふいに煙草が吸いたくなる。上を見上げると、高層ビルに縁取られた空が黒々と横たわっている。
どちらかというと気分は沈んでいるのだが、酒席になると自分自身の性か饒舌になってしまう。というか、饒舌になろうと頑張ってしまう。たぶん、黙り込んでしまう自分に耐えられないのだろう。本当に親しい人の前では黙り込んだり、ぼそぼそと言葉を紡いだりすることもできるのだが、今夜はそうはいかない。
時計の針が進むにつれて、だんだんと眠くなってくる。昨夜はあまり眠れなかった。夜に備えてどこかで少し昼寝をしようと思ったのだが、それもかなわなかった。眠気はないのだが、ひっきりなしにあくびが出てくる。身体がそういうシグナルを送ってきていることは間違いない。
ようやく閉店時間になり、お開きになった。少し混雑の波がひいた電車に身体を押し込んで、家路につく。あしたも6時起きだ。