職人。

かっこ悪いことに最近鍵を失くしたので、新橋で合鍵を作ってもらった。サラリーマンの聖地ともいうべきかのニュー新橋ビルである。合鍵や靴の修理屋さんが何軒か集まっている。

1軒目で相談したところ、「ああ、このタイプの鍵は◯◯さんところならやってくれるよ」と紹介を受ける。やってきた店はいかにもという佇まい。受付カウンターの奥は年季の入った作業場となっている。壁一面に工具やらなんやらがぶら下がっている。

値段は安い。ショッピングモールに入っているチェーン店で同じ鍵の複製を見積もってもらったところ、5倍の値段と30日の時間を提示された。カタコトのお姉さんにお代を払うと札を渡され、「15分後にいらっしゃい」と告げられる。

はたして、15分後、店に戻ると職人のおじさんが笑顔で鍵を見せる。おじさんは言葉を話せない(障がいだろうか?)が、表情とジェスチャーで、「もし合鍵がうまく使えなければまた見せにきなさい」と伝えたいことはよくわかる。ピカピカの合鍵の穴を見つめて、気持ち良い仕事だなあと思いながら晴ればれとビルを後にした。