澄んだ眼。
好きなプロ棋士は?と聞かれると、しばし考えこんで、「木村一基」と答えてしまうと思う。43歳、タイトルにはこれまで5度挑戦するも、ことごとくその壁に跳ね返されてきた。
彼の姿はイベントでも何度か見たことがある。時に自虐的な要素を取り入れた軽妙な語り口にはファンも多い。ただ、他の棋士がそうであるように、いや他の棋士以上に、将棋への思いは純粋でまっすぐな人だと僕は思っている。
彼の顔を見て印象的なのは、髪の毛の生え際よりもむしろ眼である。プロ棋士のなかでも特に澄んだ眼をしている。少年の頃から変わらない熱量で、ひとつのものごとに打ち込んできたことが、眼ざしにそのまま表れている。
6度目のタイトル挑戦となる今期の王位戦、羽生善治三冠に対して3勝2敗と、王位獲得にあと1勝と迫っている。そして、第6局が明日からはじまる。今年に入って本調子を欠く羽生三冠にも結果を出してもらいたいけど、今回ばかりは木村一基を応援したい。タイトルを獲得することを願っている。