オレンジのセーター。
セーターを捨てた。大学入試の合格発表の次の日にデパートで買ったもので、かれこれ15年間着倒した代物である。オレンジのセーターと言えば分かる人も多いのかもしれない。手元にある衣服のなかで、ダントツでの古株であった。
過去を懐かしがることが好きな割にモノへの執着は薄い性格なので、気に入ったモノを長い年月使い続けるということがあまりない。モノを整理するときは思い切りよく捨てることの方が多い。この歳になっても、靴は安く買ったものを1シーズンくらいではきつぶすことが多いし、5年以上同じ服を持っていることも珍しい。だからこそ、このセーターは特別な存在でもあった。
セーターを捨てることで、同時に手放すものはなんだろうか。あの頃の思い出だろうか。しかし、手放してスペースを空けなければ、新しいモノを迎え入れることはできない。なにもかも詰め込んでとっておくことは、古いモノにとっても、新しいモノにとっても、良いことではない。
主のいなくなったクローゼットにも、すぐ慣れてしまうのだと思う。