ピンチハンガー。

平日休日にかかわらず、洗濯ものを干すのは僕の役割であることが多い。ひとり暮らしの時は洗濯機が家になくて、洗面所で手洗いするか、週に一度コインランドリーに走っていたのが嘘のように、わが家では毎日洗濯をしている。ムスコが生まれてその量はさらに増え、洗濯ものを干すのに10分近くかかるようになった。

わが家の洗濯もの干しと言えばピンチハンガーである。長方形のスペースに洗濯ばさみが多数ぶら下がっているあれである。ハンガーを使う衣服以外は、下着もタオルもボトムも全てピンチハンガーに吊り下げてしまう。

たかが洗濯もの干しと言うなかれ、その奥は深く、気を使う点は少なくない。上下左右のバランスを均等に取るのは序の口で、ボトムやバスタオルといった重いものを中央に集めて全体の安定性を保つ、風の通り道を作るためにバスタオルは斜めに干す(真横に干すと風を遮ってしまう)、などなど諸条件を瞬時に考えながら洗濯ばさみに留めていくのは頭を使う。もちろん忘れちゃいけない、女性ものの下着は窓側中央にまとめて、斜めに張ったタオルで隠れなければならない。

そんなわけで毎日試行錯誤を繰り返しながら、その日その日のピンチハンガーを完成させていくのだが、残念ながら妻とはそのあたりの美意識が合わず叱責されたり、配置をいじられることも。人と人、価値観をすり合わせるのは容易いことではない。