夜行。
3年、いや5年だろうか、もうずいぶんと夜行バスに乗っていないような気がする。金銭面での問題というよりは、体力的な問題が大きい。眠りが浅いので、夜行バスで移動した翌日の昼間は結局3時間くらい眠りこけてしまうのだ。
学生の頃は本当によく夜行バスに乗っていた、というか東京と大阪を新幹線で往復したことは数えるほどしかなかったように思う。効きのよい空調と、ほのかに漂ってくるガソリンの臭いに包まれて、尾てい骨に痛みを感じながら目をつぶって時間をやり過ごす。空が白んでくる頃に皮肉にも眠気はピークを迎え、今ならすぐに眠りに堕ちることができるのに、と思いながら早朝の路上に投げ出される。日本でも海外でもこの感覚は同じだ。
こんな風に書いているけど、夜行バスは嫌いではない。目をつぶりながらじっとしていると、頭のなかでいろんなことに考えが巡る。時にその考えは独り善がりにあさっての方向へ飛び出したりもするけれど、普段思いもつかないようなことがこの時間にふっと湧きあがってくる。また、ふとした時に目が爛々として、頭のなかが超前向きな思考に切り替わることもある。そんな時は爛々とした目で窓の外の暗闇を見つめている。昼間にはなかなか至ることのできない気持ちになれるのが、夜行バスの良いところだったと思う。