「ごちそうさん」の戦争描写。

あまちゃん」ほどにブームとはなっていないものの、これぞ朝ドラという王道ストーリーで安定感のある評価、数字をあげている「ごちそうさん」も残すところあと3週間と少し。しかしながらこのドラマ、安定感だけではなく戦争に対する確固としたメッセージも発しているように思われる。

★★★

先月から、戦時中のストーリーが描かれている。幼なじみの源太が召集され、盛大に壮行会が催されるものの、本心では戦地に行きたくないという感情がにじみ出たシーン、その源太が病気で戻ってくるが、戦地で敵兵を殺したことによるトラウマを抱え苦しんでいるさま、大阪での生活にしても、食料品が配給制になっていくなかでのヤミ買いの様子、贅沢は敵だと誰もが口を揃え、互いが互いを監視するような社会になっていく様子など、さまざまな葛藤が描かれている。恥ずかしながら戦時中を描いたドラマや本をしっかりと読んだことがなかったので、戦時中の生活としてこういうことがあった、という事実をなんとなく知っていても、映像を通じて感じることはなかったので、新鮮な驚きがあった。ヒロインのめ以子を含めて、戦地に赴かない一般市民が、お国のために、と口々に言う姿、社会がそういう空気になっていくさまを見て、自分ならどうふるまうだろうか、と考えてしまったりもした(その答えはわからない。普段ものごとを斜に構えて見てしまいがちな僕も、世間の空気に流されない自信はない)。このあたり、NHKの戦争に対する間接的な自戒というか、メッセージが込められているように思う。

そして、そのメッセージが最も強く表れているのが、空襲に対するくだりである。悠太郎が市役所の仕事で空襲への対策を任されることとなったが、空襲による火災に対して、協力して消化にあたるのではなく、とにかく逃げろという指導を行った。これが当時の防空法に違反するとのことで、彼は逮捕され、満州に送られることになる。これに対してめ以子は、「悠太郎さんはなにも間違ったことしてへんのに!」という台詞を残す。

これはNHKによる、当時の空襲対策には誤りがあったというメッセージであると思う。そしてこのメッセージは、現代に照らせば災害時にどう行動すべきか、ということにもつながってくると思う。空襲対策だけでなく、戦時中になされた政策、国民に対して発せられた情報、それを増幅してしまった世間と社会の空気、そういったものに対するメッセージが込められている。あまちゃんとはまた少し違う、味わい深い作品である。