あまちゃん第157話。

三が日もあっと言う間に過ぎて今さら感もあるが、年末の紅白歌合戦の話をせずにはいられない。

紅白の主役は綾瀬はるかであった。冒頭のなんとも緩い雰囲気、「NHKホールが生きているみたい」という不思議な発言から始まり、セリフを飛ばしたり噛んだり、審査員のトークを遮ったりと見ている方をハラハラさせる進行。NHKとしては年間視聴率トップを奪回するために紅白には相当力を込めてきたはずで、ここまで司会進行に不慣れな彼女をよく立てたなぁと思った。

しかしながら、そんな彼女が番組の流れを作っていく。復興支援ソング「花は咲く」では人目をはばからず大粒の涙を流して場の空気を一変させ、司会進行においても、不器用ながらも出演者や審査員を巻き込んでいくのだ。必死でやっているのでふるまいに嫌味がつかない。NHKはこうした展開までなんとなく読んで司会に抜擢したのか、博打が当たったのか、本当のところはわからないが、見ていて楽しい紅白だったと思う。

★★★

そしてなんと言っても、期待を裏切ることなくあまちゃんコーナーがたっぷりと盛り込まれた。オープニングテーマであまちゃんのイントロが使われ、天野アキが開会の銅鑼を鳴らすところまでは、この扱いだけで終わったらどうしよう、という一抹の不安もあったが、最終的に20分以上のコーナーとなった。喫茶梨明日での北三陸の人たちの掛け合いから、数曲を挟んだ後、アメ横女学園とGMT6による「暦の上ではディセンバー」、そして北三陸から駆け付けた(設定になっている)足立ユイが加わっての「潮騒のメモリー」、ドラマのなかではついぞ東京に出ることのなかったユイちゃんが、ついに東京進出を果たしたという事実はユイちゃんファンの僕にとっては感慨もひとしおである。2曲とも、本業の歌手の方たちと比べれば歌に粗さもあったけれど、度胸と勢いは全くひけをとっていなかった。彼女たちは他の歌手にはない、心に響くストーリーを持ってきたのだから。

そこから、天野春子(小泉今日子)、鈴鹿ひろみ(薬師丸ひろ子)の「潮騒のメモリー」が続く。天野春子もまた、初めてのステージなのだ。若干設定に無理がなくもないが。鈴鹿ひろみは、あの最終回と同じフレーズから満を持して歌い始め、きちんと『3代前からマーメイド』と歌ってくれた。もちろん夏ばっぱこと宮本信子がカメラで抜かれる。最後はあまちゃんのメンバーがみななだれ込んでの「地元へ帰ろう」である。最後の最後にヒビキ一郎にもスポットライトがあたる。この日出演がなかったメンバーも、おそらくは舞台袖で、それぞれの場所で、このステージを見届けているのだと信じたい。本業の歌手ではないけれど、2013年、紛れもなくAKB48並みに街で流れたのはこの曲たちだった。

あまちゃんが全てではないけれど、今回の紅白は見ごたえがあった。マンネリ化し、見せかけの世代融合だけが白々しく目についたここ数年の紅白とは一味違った。逆にマンネリ化しつつあるのは民放の方だった。テレビを家から失くしてしまうのはもったいないな、と思えた2013年だったと思う。