味わい。

地方都市に出張。まだまだ冷え込みのあるエリアで、さわやかな風を感じながらアポ先へ急いでいたら、フランクフルトが焼ける匂いが鼻についた。おそらくは大学生の新歓だろうか、河川敷でバーベキューをしているのである。


若い子たちが集まって思い思いに楽しく過ごしている。僕にも確かに、希望に胸躍らせて大学、そして社会人の世界に飛び込む時期があったし、希望ではち切れそうな彼らの胸のうちもよくわかる。ちょっと背伸びしてみたり、今までとは違う新しい自分を演じてみたり。


なにかがはじまる春のこの時期は、心がウキウキするものだ。それはそれで僕も好きなのだが、長い人生、希望に満ち溢れた時期ばかりでもない。行き詰まって途方にくれる時、アクシデントに遭って絶望に苛まれる時、そんな時もある。良い時も悪い時もあって、それぞれに心が反応し、波が生まれるからこそ、人生は味わい深いものになる。そんなあまのじゃくなことを、若い子たちの姿を見て、考えてしまう。