あまちゃん第133話。

311だから第133話に持ってきたのだろうか。それとも防災の日と掛け合わせたのだろうか。何とも想像をかきたてるなかで、あまちゃんの『あの日』のシーンがやってきた。あまちゃんはけして震災をテーマにした物語ではないのだけど、この133話こそがクライマックスであり、ドラマ開始から丁寧に散りばめられてきた伏線を回収する回となったことは確かである。

★★★

映画やドラマで地震やそれによく似た災害のシーンと言えば、『日本沈没』やハリウッドの作品を思い出す。地震そのものの描写や、あわてふためき逃げまどう人々の描写を中心に描かれていることが多い。しかしながら、あまちゃんでの描写は少し毛色の違うものであった。

地震のシーンは描かれているが、そのトーンはかなり抑えられている。実際の映像は使われていない(あえて言えば、津波の光景をテレビで見つめているGMT5とアキちゃんのシーンがあるが)。直接的な被害が描かれているのは、畑野トンネルを抜けたユイちゃんと大吉が見た光景のシーンだけである。それすら、呆然とするユイちゃんと大吉のアップが中心となっている。あとは、北鉄の無線から吉田が混乱のなか大津波警報と叫ぶところくらいか。

三陸津波の被害を受けたことは、観光事務所にあったジオラマが壊れていることで表現されている。割れた窓ガラスがジオラマに降り注ぎ、灯台がなぎ倒されたり、線路が折れ曲がったり山が崩れている。観光事務所のジオラマはこのシーンのために存在したのだ。

そして地震が収まって以降は、それぞれがぶち当たった困難に対して、時には自分を鼓舞し、時には心を揺さぶられるさまが描かれている。象徴的なのは、大吉がトンネルを歩きながら、何度も「ゴーストバスターズ!」と叫んでいるシーンである。予期しない状況に陥った時、無意識のうちに慣れ親しんだ歌や言葉を口ずさんで、自分を取り戻そうとする。そんな経験は誰にもあるのではないだろうか。そして311の時にもそのようなふるまいをしなかっただろうか。登場人物たちがドラマのなかでとった行動のひとつひとつが、見るものの心の琴線に触れる糸口となっている。わかりやすく残酷な映像よりももっと、しんみりと心の中に入り込んでくる演出だ。

この回からナレーションが春子に変わった。ラスト4週間はやはり、震災後の北三陸を中心にストーリーが展開していくのだとは思うが、もうひと山、予定調和を裏切るような展開をクドカンが用意しているような気がしてならない。なんにせよ、フィナーレまで、1日最低2回はテレビの前に正座であるのだ。