感情のエントロピー。

仕事のなかで、約束を相手に反故にされることがたまにある。今の内容の仕事をはじめた三年前くらいは、僕はカッとなりやすい性質だったようで、当時の記録をみると熱っぽく交渉していたことが想像される。そのくらいテンションを上げなければやりあっていけないと自分のなかで思っていたフシもある。それが普通だと思っていた。

その後多少は経験を重ねてきて、少し距離を置いたところから冷静な目でものごとを見るようになった。熱意だけでものごとを動かせないことを感じたことも原因だと思うし、自分自身のメンタルを安定的にコントロールできるようになったこともあると思う。冷静でいることと気持ちが冷めていることとは本来的には別なものだろうが、それらをうまく分けて使うことは難しく、それが原因で目の前のチャンスを逃したこともあった(常に冷静さを保ったことが功を奏したこともなかにはあったが)。周りからみても若い割に覇気がないように映っていたと思う。

ところが最近になって揺り戻しがおきて、またもや僕は気が短くなってきた。相手に非がある場合や信頼関係を傷付けられた時に、自分の感情をありのままにぶつけて、問い詰める場面が比較的に多くなってきた。冷めた目でものごとを見ていた頃も計画的に(わざと)熱い口調になることはあったのだが、最近は思ったことをそのまま口に出すようになっている。そうすることで結果的に良い方向にものごとが進まないことも多いし、後になって自分の発言を謝ることもあるので、本当は沸き上がった感情はひと晩くらい寝かせるべきなのだろうけど、今の僕には我慢してそれを待つ忍耐がない。なぜその忍耐を手離してしまったのかと言われるといくつか理由(もしくは言い訳)が浮かんでくる(今回の震災だったり、身の回りで起こった事件だったり、生活環境の変化だったり)が、果たしてそれぞれの理由がどう作用したのか、と言われるとよくわからない。

「怒る」ことにはエネルギーが要る、とはよく言われるが、感情が沸き上がってきた時に「怒ら」ずに冷静に対応すれば、「怒る」のに必要だったエネルギーが自分のなかに溜め込まれることになるのではないかと思う。そのエネルギーを自分のなかで飼い馴らすのは、僕にとっては難しいことだ。またどこかで揺り戻しがくるのかもしれない。