上岡龍太郎さんが亡くなられた。この人の名前を聞いてピンとくるのも30代後半以上かもしれないし、関西以外の人がどこまで彼のことを知っているのかわからない。
往年のトークを聞くと、頭の回転が異常に速い人だということがよくわかる。大阪の人にはえてして、学業の成績とは裏腹にいわゆる地頭が良い人が多い。彼も勉強に力を入れれば実業でもひとかどの人物になっていたことは間違いないだろう。さはさりながら、学業に力を入れてお行儀よく生きることがアホらしい、という感覚もよくわかる。
現役時代の取り回しもさることながら、引き際がまた良かった。58歳で引退している。「自分の芸は21世紀には通用しない」という持論を持っていたのもまた潔い。最近は晩節を汚しがちな芸人も増えているなかで、本当にシビアな芸の世界で生きてきたということが分かる。それに比べればいまの大御所と呼ばれる芸人は、後輩にちやほやされてその気になっている人が多く、まだまだだなと見えてしまう。
上岡龍太郎の話し口やきっぷの良さなどは関西でいきる男たちも一度は見習ったことだろう。しかしながら、完全に生き様をコピーすることは難しくて、できそこないの感じの人間が巷にはあふれている。自分もまたそうなのだと思う。
またひとつ、昭和の大阪の雰囲気をまとった人物が去っていく。