目撃者。

3月8日、渡辺明名人への挑戦を決めるA級順位戦プレーオフが行われ、藤井聡太五冠が広瀬章人八段との対局を制して、挑戦者に名乗りを上げた。4月からはじまる名人戦はかつてない盛り上がりを見せることになるだろう。

谷川浩司九段が40年近く前に打ち立てた最年少名人就位の記録を更新できるチャンスは今年の1回のみだ。この記録を塗り替える棋士が現れるとは、藤井五冠が出てくるまでは想像もつかなかった。そんな空前絶後の記録に挑戦しようとしている。

それだけではない。現在羽生善治九段との防衛線を戦っている王将戦渡辺明二冠に挑戦している棋王戦、どちらもあと1勝で番勝負を制するところまできている。3つのタイトル戦を全て勝ち抜くことになれば、七冠を保持することになる。残りの王座のタイトルは永瀬拓矢王座が保持しており、羽生九段よりも速いペースで、全冠制覇という偉業が達成できるところも見えてきているのだ。

デビュー当時から、はたまたデビュー前から凄い棋士だということは承知のうえであったが、短期間でここまで本当に登り詰めることは思わなかった。大谷翔平もそうだが、同じ時代に生きて歴史の瞬間を目撃できることの幸福を噛みしめる。