カニ、蟹。

カニすき鍋を食べる。ここまで感染者数も落ち着いてくれば、鍋ものの会食にもあまり抵抗感はなくなってくる。飲食店はどこも満席近いし、みんなマスクを外して談笑している。


つい先日カニ解禁とのことで、街中ではツアーバスなどもよく見かけた。関西の人は本当にカニが好きである。臨時列車に乗ってカニを食べにいくなどという風習を聞けば、関東の人は驚くだろう。


父方の故郷は福井県なので、小さい頃はよく田舎からカニが送られてきた。子どもたちはほぐしやすいカニの大きな脚だけを取ってもらい、亡くなったおばあちゃんはひたすらに甲羅や小さな脚から身を掻き取って食べていた。いつも「こんなんは、子どもの頃はおやつやったで」と言うのが口ぐせであった。昔は浜でそのままカニをゆでて食べていたのだと言う。


なんでもないことなのだが、ふと思い出してしまう。幼少期の記憶こそが人格を作る、というのは紛れもない真実である。大人になってから美味しいものを食べたり、旅行をしたりすることももちろん楽しいのだが、子どもの頃の経験はそれに勝るよなあ、と思う。歳を取るとだんだん食べられなくなるものも増えてきて、思い出を食べているようにもなる。