着地。

少し前に最終出社を終えた。長年勤めた会社だったので、もちろんいろんな感慨もあった。ただ、自分のなかで辞めることはもうかなり前から決めていたし、心の準備も段階を踏んで重ねてきたので、想像していたほどに最後の場面での心の揺れはなかったし、感情をうまくコントロールしながら、数週間前の日記で例えたように、最終の着地まで自分をもってゆくことができた。無事にやり遂げた、という気持ちが強い。


それでも最後のあいさつでは、声が詰まってしまい、これ以上いろいろしゃべるとまずい、という状態になってしまったので、ずいぶんと端折った挨拶にしてしまった。多くの人が集まって、自分に視線を向けているなかで、はたして自分はどんな顔をしているのだろうか、と不思議な気持ちになりながら、最後の時間を過ごしていた。


不安もプレッシャーも、なにもかもが最後の瞬間に昇華されて、羽が生えたかのように身体が軽くなった。卒業、というほどやりきれたかと自問すると自信はなくて、もしかすると中退という言葉のほうがふさわしいのかもしれないけれども、たしかにひとつの務めを果たした、という安堵感は強い。