夜風。
北陸出張の余韻醒めやらぬうちにいつもの大阪出張。ホームグラウンドに帰ってきた感がある。
珍しく夜の予定もなく、帰りの新幹線まで少し時間が残っていたので、大阪駅前ビル群で少し寿司をつまんで帰る。回転寿司でなく立ち食い寿司の店を選ぶあたり少しおっさんになったなあ、と思う。最近撮られた写真を見ると、しわが増えて父親に風貌が似てきたなあと思う。
下駄に盛られた、こぼれんばかりに乗っかったネタにひとりにんまりとしつつ、小さなグラスに注がれた日本酒をちびちびと呑む。まだお客さんからの電話がかかってくるかもしれないような時間帯にこうして酒を飲んでいることに背徳感を感じる。懸案としていたことも、なるようになるだろう、という半ばやけくそな気持ちになる。
最近になって、飲まないとやってられない、という人の気持ちが少し判るようになってきた。そういう境地に至って毎夜気分良く過ごすことに羨ましさもあるが、人生を踏ん張って渡っていくためのロープを手放してしまうような後ろ怖さもある。僕にはまだまだ、しらふで向き合わなければならないことがある。
新横浜に着く頃にはすっかり酔いは醒めて、5月の優しい夜風が吹いていた。