凄いやつ。
いつも夜はスヤスヤ眠ってくれる息子が、昨夜に限っては夜のあいだひんぱんにウンウンうなっていたので、きょうの僕はいささか眠い。特急のシートに深々と腰を下ろして惰眠を貪ろうとするが、尾てい骨がシートにあたって痛いのと、斜め後ろのビジネスマンのこてこての大阪弁が間断なく聞こえてきて、まどろむことしかできない。
ビジネスマンの大阪弁を聞いていて、小学校の友達のHくんのことを思い出した。彼の家はちょっとした家業があって、大阪ではそれなりに有名な食べものを売っている。当時の僕には彼の家の会社がとてつもなく大きく見えたし、事実彼の家はお金持ちで、僕ら同級生が持てないものを持ち、いい暮らしをしているように見えた。僕から見れば彼はどこからどう見ても凄いやつだった。
彼とは中学から離れてしまったので、その後のことは断片的にしか知らない。時折地元に帰った時に道で会うと、小学生の頃と変わらず、威勢よく声をかけてくれる。一番最近声をかけられたのは今年の正月だったろうか。たぶん何十年経とうが、彼は威勢よく声をかけてくれる、僕にとって凄いやつなのだ。
すっかり秋が深まって、きょうの空は低い雲が垂れ込めている。あっという間に年末がやってくる。