一瞬。

息子はけっこうふてぶてしい顔をしている。

子どもが産まれてくれば「この子はなんとしても自分が守らなければ」だとか「この子代わりになら死ねる」だとか、そういう感慨を持つものなのだろうと思っていたが、案外そうでもなかった。愛おしいという気持ちはあるのだけども、もろくて頼りなくて守ってやらなければならない存在、という感じがしなかったのだ。そりゃあ産まれたての赤ちゃんなのだから、実際はものすごく弱い存在なのだが、親バカを承知で言えばこの子はとてつもなく強いのではないかと思わせる、そんな存在感にあふれているのである。

もちろん、たたずまいがふてぶてしくとも、甘えん坊だったり、病気にかかりやすかったりということも充分考えられる。結局のところ中身は僕と似ているのかもしれない。強さやたたずまいというのは持って産まれるものなのかどうか、ということもある。

彼はきっとすぐに大きくなってしまうのだと、直感的に感じる。何十年も経って振り返れば、もう少しゆっくり一緒にいたかったな、と間違いなく思うことになるのだと、今から確信している。