信州。

先週は長野県へ出張。最近担当し始めたエリアだけに、新鮮な気分で足を踏み入れる。長野県にいて面白いなと思ったのが、長野県の人は自県のことを必ず「信州」と呼んでいるということ。もともと善光寺門前町だったとはいえ、明治時代まではごくごく小さな町に過ぎなかった長野の町がなぜか県庁所在地に選ばれ、松本市が県下第一の町であり続けるという逆転現象が存在したことも影響しているのだろうか。テレビ番組などでも「長野」の名称はほとんど使われず、「信州」と呼ばれている。

★★★

松本に入ってから長野へと移動する。長野県はどこにいても、盆地に山が迫り、太陽の角度とあいまって素晴らしい光景を作りだすのだが、なかでも安曇野とその向こうにそびえる穂高連峰の姿はとびきり美しい。山の向こうに沈まんとする陽の光がぽつぽつと建ち並ぶ民家に優しく降り注いで、なんとも幸福感の溢れる世界を創っている。

やがて列車は長いトンネルに入って、深い山を分け入ってしばらく走る。我慢強く峠を登りきってから、夕闇が濃くなった善光寺平に出る。眼下に見える平原に、星のように民家の灯りが浮かぶ。あの星のひとつになれたらいいのに、と思いながら長野の町に下っていく。