イーグルスが台湾でアジアシリーズを戦ってはいるのだが、それを除けば今年の野球シーズンは終わり、話題はストーブリーグに移っている。マー君のメジャー挑戦や、戦力外通告を受けた選手がトライアウトに挑む姿、移籍市場の動きなどが毎日紙面を賑わせている。
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個人的に気になっているのは、FA宣言をした選手をめぐる争奪戦である。ドラゴンズの中田賢一投手やカープの大竹寛投手に対してホークスが4年総額10億円という提示を行ったとされており、それにつられるように他球団の提示額も上がっているという。2人とも先発投手としてそれなりに活躍してきた投手であるが、どうひいき目に見てもエースと呼べる存在ではない。中田投手の今季成績は4勝6敗、年俸は7000万円、大竹投手の今季成績は10勝10敗、年俸は1億円であることからも、ホークスの提示額には違和感を感じる。4年10億となれば、カープの押しも押されぬエースである前田健太投手の今季年俸2億円を上回るのだ。また、金額面ではないが、タイガースが中田投手にエースナンバーである背番号18を用意している、という話も聞く。タイガースの他の選手はどう感じるだろうか。
もちろんFAは長年1チームで働き続け、結果を残してきたことによって得られるチャンスであり、FAはドラフトとは違って、既に実績を残してきた選手を獲得できる数少ない機会ではある。そうなれば、多少高い対価を払ってでも選手を獲得しに行く価値はあるのだろう。各球団ごとに経営体力も違うわけなのだから、同じ成績を残していても貰える年俸に差は出てくるわけで、もっと年俸のもらえる球団に移る機会を生かしたい、という選手の意向ももっともだ。
しかしながらFA市場がここまで高騰すると、選手がどんどんFAに流れて行きかねないという状況をもたらすことになる。資金力のある球団とない球団の差ははっきりとしているわけで、いくら選手が育った球団に愛着があっても、貰える年俸に何倍も差がつくようであれば、年俸を出せない球団を去ることを選択せざるを得ないだろう。もしくは、FAの際に引き留め策として、同程度の成績の選手をはるかに上回る年俸をいきなり提示することもあり得る。個人的には、それは野球界全体の魅力を減らしてしまうことになるのではないか、と思う。
FAで移籍した選手の先行きについても気になる。活躍できれば良いのだが、結果を残せないとなると、移籍時の期待や年俸が高いだけにバッシングも大きく、挫折とともに野球人生を終わらせてしまった選手も少なくない。FA移籍によって好待遇を手にすることは間違いないのだが、それがステップアップにも毒まんじゅうにもなる可能性を孕んでいる。選手にとって本当に良いことなのか、僕は懐疑的な目で見ている。