今期の朝ドラ。

ここ数年朝ドラを見る習慣が身についてしまい、今期も「純と愛」を見ている。習慣になってしまったものは恐ろしい。朝の時間帯に見られなかったときも、必ず23時からの再放送や土曜日の再放送を見るようにしている。

純と愛」のストーリーにはそれなりに賛否両論があるようだ。朝ドラをよく見ている人と話をしても、ストーリー展開が唐突すぎるだとか、重い話が多すぎて朝ドラらしくないというような声を聞く。認知症、DV、引きこもり、離婚等々、現代社会のどす黒い部分がこれでもかとてんこもりになっている。全て今までの朝ドラが避けてきたようなテーマばかりだ。展開的にもいろいろとあり過ぎて、もはや昨年末までの前半のシリーズがはるか遠い昔の話に思える。

しかも、主人公は人の本心が見えるというなんともオカルトチックな要素を持っている。それ以外にも非現実的なシチュエーションがたくさんあるのだが、見続けているうちに不思議と違和感を感じることなくストーリーの世界観に巻き込まれているように思う。今までの朝ドラは予定調和的な要素も大きかったし、どちらかというとストーリーから距離を置いて眺めているような感覚だったが、そんな朝ドラのあるべき型をぶち壊している。

朝ドラは予定調和型のほんわかしたストーリーで、一日のスタートに彩りを添えるべきだという考えの人から見れば、「純と愛」の展開や世界観には我慢できないだろう。正直言うと毎朝見続けるには疲れる内容だとは思うし、このドラマについて誰かと話をする時には、否定的なトーンから入ってしまいがちになる。みんなでワイワイと今後の展開を予想してなり行きを見守るような「梅ちゃん先生」のような典型的な朝ドラの対極にある。

しかしながら、皆の前ではくだらないと批判しながらも、それぞれの心の中ではバッサリ切り捨ててしまうこともできず、ひとりどっぷりと世界観に浸かって、こっそりと見続けてしまう。このドラマはそんな人が多いのではないだろうか。その証左として、評判の割に視聴率は今までの朝ドラと比べてもそうそう悪くない。個性というかアクの強い今回の朝ドラは、いい意味でも悪い意味でも見た人の心に印象を残している。ストーリーはめちゃくちゃでも、そのなかで必ず誰の心にも引っかかる要素が少なくともひとつは盛り込まれているのではないだろうか。だからこそ、見るのをやめてしまうのは何か自分と向き合うことから逃げてしまうような感覚になってしまい、ついつい見続けてしまうのだろう。

あと4週間、全く読めなかった展開もようやく結末がチラチラと見えてくるようになってきた。さんざん振り回されたストーリーも、最後は朝ドラらしくハッピーエンドになるのだろうか。楽しみにしている。