ソーシャルデトックス。

青森出張からそのまま、黒石市の山間部にある青荷温泉というところで一泊してきた。なかなかひと息付けない日が続いているので、ちょっとした自分へのごほうび、といったところ。

青荷温泉ランプの宿は、県道から脇に入った小さな林道を7キロほど進んだところにある、一軒しかない小さな温泉だ。豪雪地帯にあり、温泉に自家用車でたどり着くことはできない。宿のマイクロバスが、両脇がバスの屋根よりも高くなっている、車一台がやっと通れるような雪の壁のなかを進んでいく。やがて谷底に豆粒のように見える建物が、少しずつ近づいてきて、20分少々かかって宿に着く。

ランプの宿と言うだけあって、宿の灯りは全てランプで賄われている。というか、電灯がない。一応電気はきているようだが、基本的なつくりとしてコンセントがなく、したがってテレビなどもない。日が暮れると部屋は相当暗く感じられる。食事をする大広間も、供されている小鉢に入っているものが何なのか、焼き魚がどんな色をしているのかにわかにはわかりづらい。宿というよりも山小屋に近い。しかしながらストーブはしっかり焚かれていて居心地は快適そのものである。お風呂は4つあり、それぞれ個性があって飽きないので、完全に俗世間から切り離されて温泉三昧に浸るためにあるような宿である。僕も1晩で6回風呂に浸かってしまった。

そして僕にとって大きかったのは、たったの一晩であるがソーシャルデトックスになったということだ。当然携帯電話の電波も圏外であり、まるまる18時間ほど、スマートフォンの電源を入れること自体がなかった。いまどき山に登っても電波が届くことが多いなか、強制的に隔絶された環境に置かれるというのはなかなか稀な経験である。普段は身体の一部のように肌身離さず持っているスマートフォンも、SNSのチェックも、いったん圏外に入ってしまえば、案外気にならなくなってしまうものだということを気づきことができた。そうやってランプの灯りが湯気でぼやけ、幻想的な雰囲気を醸し出している温泉に浸かっていると、頭のなかで凝り固まっていたものがどんどん溶けて流れ出ていくような感覚に包まれた。

もはや改めて説明する必要がないくらい、ここ数年の僕はSNSにずぶずぶと浸かっていた。それは僕にとって欠かせない癒しではあるけれど、一方で自分自身のさまざまな部分が蝕まれていることも薄々と感じていた。SNSと意識的に距離を置く機会をもう少し増やすべきだと思うし、実践していきたいと思う。