人生における大切な決断は布団のなかで生まれる。

昨夜はなかなか蒸し暑くて、いったん眠ってもエアコンが切れてから目が覚めてしまい、それからなかなか眠れなかった。神経が過敏になっていたこともあると思う。朝方になってぐっすりと眠れたので、昼間の活動にはそれほど響くことはなかった。

小学生の頃の方が眠れない日は多かった。特になにか悩みごとがあるわけでもないのに眠れない。毎日布団に入ってから最低でも30分以上は起きていたと思う。頭のなかで寝よう寝よう、早く寝なきゃ明日昼間に眠くなったり、疲れてしまうよ、と念じている。きまって同じシーンが頭の中を流れる。緑色の電車が走っている。大きな車輪が僕めがけて転がってくる。地上数メートルほどの高さを鳥のように飛んでいる。いつしか寝よう寝ようと念じなくなり、今何時頃だろうと気にならなくなった頃、意識が途切れる。

中学生の頃は布団に入って目を閉じると妄想ばかりしていた。スポーツができて女の子にモテるもう一人の自分。パラレルワールドの自分の世界を、毎日まいにちまるで30分アニメのように、前の日の続きの物語を妄想していた。今思うとかなりアブない中学生だと思う。

高校生くらいからはほとんど夜眠れなくなるということがなくなった。部活やら学校行事やらでかなり遅い時間まで活動していたので、単純に昼間のうちに体力を使い切っていたのだと思う。あまり夢も見なくなった。そのうちに神経が鈍感になり、昼間に多少のことがあっても夜になるとぐっすり眠れるようになった。

ここ数年、山に登ってそこでテントを張って泊まる機会が出てきて、久しぶりに『眠れない』感覚を思い出した。山小屋だとぐっすり眠れるのだが、外界と布一枚でしか隔てられていないと僕は神経が過敏になって眠れなくなる。眠りに落ちるまでの数時間の間に、昔小学生の時に眠れなかった時に脳裏をかけめぐったシーンがフラッシュバックしてきて、懐かしい気持ちになった。

眠る前にいろいろと頭のなかで考えると、1巡目はえてして独り善がりな方向に思考が飛んでいく。同じことを、2回、3回と繰り返して考えていくと、だんだん客観的に思考が修正されていく。今まで人生において大きな決断をする場所は、いつも布団(ベッド)のなかだった。眠れないくらいに悩むこともないような時は、えてして自分のなかに変化は起こらない。

きょうはぐっすり眠ることができるだろうか。