どうぶつしょうぎ。

どうぶつしょうぎで初めて遊んでみた。駒の種類が4つしかないので非常にシンプルである。将棋のルールを知っているならば一局指してみただけである程度コツが掴めるだろうし、将棋を指せなくとも覚えるのにそう時間はかからないだろう。うまく先を読んで指せなくても、単に駒を取ったり取られたりしているだけでも楽しいし、対局も5分程度で終わるので、お手軽なゲームとしてはよくできている。性別にかかわらず5歳くらいになれば遊べると思う。既に国内での売上げは50万部を超えたとのことで、おもちゃ屋でも一定のスペースが割かれている。

おとといに始めてから、15局ほど指してみた。まず初手の指し手が4パターンあるのだが、どの手が明確に有力だとも言えないようだ。ヨコに3マス、タテに4マス、合計12マスの小さなフィールド、駒も互いに4つずつの状態からスタートするので、勝負のパターンも定型化されてくるかと思いきや、ひとつとして同じ内容にはならない。それどころか計算上は約78億通りのパターン(局面としては2億)があるのだという。既にコンピュータによって指し手は解析されており、初手にどの手を指したとしても、後手が76手ないしは78手で勝つという結論が出ているとのことだが、人間がその通りに指しこなすのは、途中に無数にある枝分かれに対して全てに最善の応手を続ける必要があり、事実上困難とされている。

そんなわけで人間どうしの戦いの場合、これといった必勝法もなく楽しめるわけなのだが、なんとも奥が深いことを早速実感している。フィールドが狭いので、自分の駒どうしが邪魔をしあって動けなくなったり、ライオン(将棋での王将にあたる)の逃げ道が塞がれることで負けてしまうことが多いのだ。よって少し強い勝つためには自ずと先を読んで指していかなければならない。将棋に限らずボードゲーム全般で必要とされる「先を読む」という作業が、どうぶつしょうぎにおいてはかなり早い段階から求められる。

また、「悪い手を指さない」という能力も求められるようになる。どうぶつしょうぎも他のボードゲームと同じく相手と自分が1手ずつ交互に指すゲームであるが、なんでも1手指せるからといって深く考えずに指した手が足かせとなって負ける、という経験が何度かあった。こんな経験を繰り返すと、相手を攻めるだけではなく自分が負けないための手を指さなければ、と意識するようになる。将棋でも、「悪い手を指さない」ということはトップ棋士の戦いでよく意識され、特に羽生三冠などはその能力に長けていると言われるが、これまで僕のレベルでは理解できていなかった。それが、よりシンプルなどうぶつしょうぎを指すことによって初めて身体で理解できたように思う。

将棋の世界でのハイレベルな感覚やエッセンスを、どうぶつしょうぎの世界ではそこまで熟練せずとも体感できると言ってもよい。なんにせよ、奥深くかつ楽しいゲームだと思う。