余裕。
仕事でいろいろなところに行く。80年代から90年代に建造された施設に行くことも多い。いまの世の中の基準からすればどうにも非効率で、採算が合わないばかりか、維持コストだけでも持て余してしまうのだが、素晴らしいものもなかには多い。
一方で最近の建造物は洗練されており、維持管理を考えても無駄がないのはその通りなのだが、採算を考えておしなべてスペースはせせこましい。滞在をしていても心から休まるというものではない。
なんというか、逆説的というか、事業としては失敗してしまったもののなかに贅沢さが内包されており、豊かな時代、いい時代だったということを感じることができるのである。昔に比べていまの経営者は失敗をすることも減ったのだと思うが、かえってそれは消費者にとっては悲劇なのかもしれない。
そんな過去の失敗作を拾い集めてうまく回るように作り直すことができれば、まだまだ価値のあるものとして生まれ変わらせることができるのではないだろうか。いまの建築コストを考えると同じものを作ることは夢のまた夢になっているなか、そのような行為の意味が深まっていると思う。