ダッフルコート。

真っ赤なダッフルコートを持っていたことがある。あれは中学生の頃だったか、高校生になりたての頃だったか。赤といってもブラウン系ではなくどぎついケミカル系の赤なので、男が着るにはかなり時期を選ぶので、あのタイミングしかなかったのだろう。就学前の女の子とかならドンピシャで似合うものなのだが。


90年代は小学生〜高校生として過ぎていった。世相のこともあまりよくわかっていなかった。景気は既に悪くなりはじめていたけれども、バブルの残り香はまだしつこく残っていた。華原朋美がその残り香をまとってブレイクした最後のアーティストだったかもしれない。


いまの中高生男子が赤いダッフルコートを着ることはあるだろうか。みんな、もっと落ち着いているし、もっと現実をみて生きているような気もする。いまはすっかりと枯れた文章を増産している僕にもフワフワと浮ついていた時代はあったのだ。それが90年代というものかもしれない。


なんとなく、世界はよくなっていくだろうという幻想を抱いたまま、20数年が過ぎて、そんなものはついに全部吹っ飛んでしまった。うちの息子は果たしてなにをアイコンにするだろうか。