持ち場で。

またひとつ、前に進む。何度経験しても稀有な感情が湧き上がってくる瞬間。

ひとつの物語が幕を閉じて、新しい物語の幕が開く。日常はその前も後も続いていくものなのだけど、気持ちだけは切り替わっていて、不思議なものである。

もちろんなにかを変えていこうとするときは軋轢も生じるし、人間関係のわだかまりもないわけではない。なかにはご都合主義で美味しいところだけさらっていこうとする人間もいる。

ただ、大半の人たちは真摯に目の前の仕事に向き合っていて、仕事に対する愛着や誇りもあり、なんとしてでも自分の持ち場を守ろうとする責任感もある。

そうした気持ちだけが、ひとつの物語を繋げてきたのだという思いもある。

自分もまたとある時期が来ればこの場から去ってしまう類の人間である。どんなことがあろうともその土地を、その場所を離れずに職務を、そして人生を全うしようとする人からすれば軽いことは間違いないのだろう。それでも、そういう人たちの気持ちを大切にしようとする姿勢だけでも忘れないようにしようと思う。