西へ西へ。
ちょこちょこ移動しながら西へ西へと足を延ばして、生まれ育った町を宿とする。すっかりと遅くなって駅に降り立つと、下手なカラオケの音が聞こえてきたり、居酒屋やバルから賑やかな話し声が聞こえてくる。ずいぶんと社会も正常化してきたし、町に元気が出てきたように感じる。小さい頃からこのかた、地元がこれだけ賑わっていた記憶はあまりない。
いろんな街でいろんな人と会って話をしてきた。だんだんアウェー感のある街が少なくなってきた。どこにいてもそれなりに生きていける、という根拠のない自信も備わってきた。それでも、生まれ育った町には独特の安心感がある。実際にはそんなものはないのだけれども、忘れ物を取りに帰ったような、心のどこかが充電をされるようなそんな感覚である。
時代はどんどん移り変わって、生きづらくなっている部分も増えてきている。未来に絶望してしまう人も増えているのも感じ取れる。それならそれで、目の前の1日を楽しく過ごすことにフォーカスすればよいではないか、という考え方もある。この町はそんな雰囲気にあふれている。