初夏。

5年ぶりくらいだろうか。西日本、海沿いの小さな街に赴く。瀬戸内の海は穏やかで、心が洗われる。いつかこんなところでのんびり暮らせたら、と思う。


粉ものを食べさせるお店に入る。座敷にあがり、旧知の方と交流する。懐かしい話で盛り上がるのも楽しいし、これからの話ができることもありがたい。家族それぞれにいろんな人生がある。ああ、そしてわたし自身も、自分の人生を生き始めようとしているんだな、ということを噛みしめる。


昼間の蒸し暑さも取れて、涼しい夜風が吹いている。守るものはあれど、所詮人間一匹だなあ、とブツブツつぶやきながら、とっぷりと昏れた駅から、都会に向かう電車に乗る。電車のシートには人も疎らである。


1人だからこそ、つながって生きようとする。あまりにも人とつながってしまうと、時には傷つくこともあり、自由でなくなることも多い。それでも、関係を構築していくことこそが、自分自身の良い意味での重しとなり、土壇場で逃げずにものごとと向き合い続けるための活力となるのだろう。


眠い目をこすりながら、小さい頃から通ったアーケードをくぐって、今夜の寝床に向かう。