鳩。

オフィスに行く道すがら、道路で轢かれた鳩の姿を見た。羽が散らばっていることから、ああ鳩なんだろうな、ということは認識したが、血も流れていないし、身体の調子でも崩して道端に落ちたんだろうか、と思って何気なくみると、身体がありえない角度で曲がっており、ああ轢かれたのか、と気づいた。普段ならば、目を背けてしまいそうになるところなのだが、脳が礫死体であることを認識せず、ぼんやりとその身体を見つめ続けていた。


羽なのか肉片なのか、周りにも、鳩の身体の一部であったであろう固体が飛び散っている。そして仲間であろう鳩たちが何羽か寄ってきて、その羽だか肉片だかをついばんでいる。彼らはどういう感情を持っているのだろう。その姿は、失われた仲間を慈しんでいるようにも見えたし、食糧をむさぼり食っているようにも見えた。


つい先日、自宅の近くで大きくニュースにもなった交通事故があった。道端に転がった電動自転車。人間の姿は映しだされてはいなかったけれども、その映像だけで、身の毛もよだつような事故の瞬間を思い起こさせるには充分であった。本当に、生というものはあっけないものだ。