鑑真号。

知人から鑑真号の話を聞いた。昔、バックパッカーをしていた頃、ついぞ乗れなかった中国行きの船である。いまも変わらず、新鑑真号として大阪と上海を結んでいる。


2000年代の前半はまだバックパッカー旅行がぎりぎり、深夜特急小田実の影響を帯びていた時代と言っていいだろう、日本での生活に適合するのに疲れた青年たちがふらふらとアジアを、世界を巡っていた。大学の友人も、「うんと貧しい世界を見てみたい」と言って鑑真号に乗り込んでいた。


あれからまだ15年くらいしか経っていないのに、中国はもう日本を追い抜かんばかりだ。旅の仕様もずいぶんと変わったし、物価水準も変わってしまった。なによりも、日本は旅行者を受け入れる側の国になってしまった。


それでも、船はまだ両岸を結んでいる。いつか時間を持て余す身になって、乗ってみようかと思う頃まで、運航していてくれるだろうか。そしてその時の両国関係はどのように変わっているだろうか。