引退。

イチロー引退である。まだこの時点では会見を聞いていないのでなんとも言えないが、彼のなかで決めていたことではあったのだろう。


最後の打席、第2WBC決勝の再現を待ち望んで見つめていた。あのときと同じように速球を弾き返したが、いまひとつ勢いが足らずショートのグラブに収まってしまった。


そして、その裏の守備についてから監督が交代を告げる。たっぷりと時間をとって、最後の瞬間を皆で共有するのはメジャーの野球の良いところだ。イチローが次々とチームメイトとハグを交わすなかで、奇しくもメジャーデビューを飾った菊池雄星がもじもじと順番を待っていたのは、なんだかすごく共感ができた。彼もまたイチローの前では1人の野球少年なのだ。


思い起こせば、彼が鮮烈なデビューを飾ったのは、阪神大震災の前のことなのだ。改めて、その気の遠くなるような長い長い時間、第一線を張り続けたことに敬意しかない。